記事監修・作成:小さいわが家のお葬式(株式会社SEC)
葬儀や法要の際に祭壇の前で行われる焼香(しょうこう)。「なんとなく見よう見まねでやっている」という方もいるかもしれません。焼香は仏教と深い関わりがあり、故人に向き合うための準備としての意味があります。
今回は焼香の意味や詳しい作法、宗派による作法の違いやマナーについて詳しく解説します。後日の弔問で焼香をあげる場合のやり方も併せて紹介するので、参考にしてください。
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家族葬とは少人数で執り行う葬儀のスタイルです。家族葬という名称ですが故人の家族のみで行う葬儀を指すのではなく、生前親しくしていた友人が参列する場合も少なくありません。参加者は一般的に2〜30名程度と小規模で、形式ばらず比較的アットホームな葬儀となります。
家族葬のメリットは落ち着いた雰囲気の中で、故人とゆっくりお別れができる点です。また、家族葬なら葬儀の規模を抑えられ、喪主の労力や費用の負担を軽減できます。身内や友人だけで執り行うため、葬儀に故人の意思を反映しやすいという特徴もあります。家族葬なら故人が気に入っていた楽曲を流すといった、故人らしさを大切にした演出が可能です。
家族葬であっても、故人の関係者が広く参列する従来の葬儀と流れやマナーは同じです。
焼香とは葬儀や法事の場で抹香(まっこう)というお香を焚き、仏や故人を拝むことを指します。抹香とは樒(しきみ)という植物の葉や皮、白檀(びゃくだん)などを粉末にしたものです。焼香による香りで身体と心を清められ、故人と向き合う準備ができるとされています。
墓前や仏壇でお線香をあげることも広義の焼香に含まれます。とはいえ、一般的に焼香というと葬儀で抹香を焚き、故人に祈りを捧げることを指す場合が多いでしょう。
なお仏式以外の葬儀では焼香が行われず、抹香やお線香も使用されません。神式では玉串奉奠(たまぐしほうてん)、キリスト教式では献花が焼香に当たります。玉串とは榊の枝に紙垂(しで)を付けたものです。献花には白い花が使われることが一般的です。
焼香の作法は宗派ごとに細かい違いがありますが、基本的なマナーは共通しています。ここでは焼香の基本的な手順とマナーを紹介します。手順は以下のとおりです。
宗派ごとの違いが出るのは上記のうち3番目の、抹香をつまんだ後の手順です。宗派によって抹香をつまむ回数や、額に押しいただくか否かが異なります。押しいただくとは抹香をつまんだ手を、額の高さまで上げることを指します。
宗派ごとの違いに関しては、後述の「宗派によって異なる焼香の回数」をご参照ください。
数珠(じゅず)は念仏を唱える際に使われ、仏への帰依を表すとされる法具です。念仏を唱える際に使用することから念珠(ねんじゅ)とも呼ばれます。数珠は葬儀の場の他に、お通夜や告別式でも使用されます。元々は僧侶が唱えた念仏の回数を数えるために用いられていました。
葬儀の式場では数珠の房が真下に来るようにして、左手で持つことがマナーとされます。数珠を畳や椅子の上に置くことはマナー違反です。焼香の際は数珠を左手にかけ、右手で抹香をつまみます。手を合わせる際は両手の親指と人差し指の間にかけ、房が真下に来るようにします。本来数珠は読経を行う僧侶が持つものなので、葬儀において持参が必須というわけではありませんが、マナーとして持っておいた方が良いでしょう。
一般的な焼香の流れを立礼焼香、座礼焼香、回し焼香の場合に分けて紹介します。焼香の順番や家族葬の焼香でお辞儀が必要なのかも併せて解説します。
焼香の順番は宗派や地域によって異なるものの、喪主から行うことが一般的です。基本的には故人と関係が深かった人から順番に焼香を進めていき、喪主の次は二親等内の家族へと続きます。ただし、遺族の考え方によっても順番は変わる場合があります。
焼香では順番が回ってきても、名前が呼ばれたり合図があったりするわけではありません。前の人が焼香を終えたら続けて行いましょう。順番が回ってきた際は次の人に会釈をし、席を立ち上がって祭壇に向かいます。
焼香には立礼焼香、座礼焼香、回し焼香などいくつか様式があり手順が異なるため、それぞれの違いを把握しておきましょう。次項より様式ごとの手順を紹介します。
立礼(りつれい)焼香では祭壇の前まで歩き、立ったまま焼香を行う一般的なスタイルです。葬儀場やホール会場などで執り行われる、椅子席の葬儀で採用される場合が多いでしょう。立礼焼香の手順は以下のとおりです。
焼香をする際は左手に数珠をかけておきましょう。前述したように宗派によっても焼香の回数や作法が異なるため、故人の宗派に合わせる場合はマナーを確認しておいてください。
上記で紹介したうちの11番目のお辞儀は、家族葬の焼香では不要です。お辞儀は一般の参列者に向けて行われるものなので、故人の家族や近しい人のみの家族葬では必要ないとされています。また、2番目の遺族と僧侶に向けた一礼に関しても、家族葬なら省略される場合が少なくありません。10番目の一礼も家族葬では省略される場合が多いでしょう。
家族葬の場合は焼香台まで進み、正面に向けて一礼した後に焼香してください。焼香を終えた後も正面に向けて一礼し、元の席に戻ります。
また、大勢が参加する一般的な葬儀であっても、基本的に親族同士のお辞儀は必要ありません。
座礼(ざれい)焼香は椅子席ではなく畳席の場合に行われます。お寺や和室のある会場などの葬儀で採用されるスタイルです。座礼焼香では移動時に立ち上がらず、膝を床につけたまま向かいます。膝を床につけてつま先立ちで歩くことを膝行(しっこう)、膝退(しったい)と呼びます。座礼焼香の手順は以下のとおりです。
座礼焼香で祭壇までの距離が遠い場合は、膝行や膝退ではなく中腰で移動しても問題ありません。
回し焼香とは焼香のため移動する立礼焼香や座礼焼香と異なり、自席で焼香するスタイルです。会場が小規模な場合は、焼香のための移動が難しいためこの方法が採用されます。参列者の間で焼香台(香炉と抹香のセット)が回されるので、自席で座ったまま焼香を行います。
回し焼香は自宅で葬儀を執り行う場合や、高齢者が多い場合にも採用されることがある方法です。
宗派によって焼香の回数は異なります。また、つまんだ抹香を額の高さで押しいただくかどうかも、宗派によってマナーはさまざまです。宗派に応じた焼香の回数とマナーは以下のとおりです。
【宗派による焼香の回数・マナー】
宗派 |
焼香の回数 |
押しいただくかどうか |
浄土宗 |
1〜3回 |
○ |
浄土真宗(本願寺派) |
1回 |
× |
浄土真宗(大谷派) |
2回 |
× |
浄土真宗(高田派) |
3回 |
× |
臨済宗 |
1回 |
× |
天台宗 |
1〜3回 |
○ |
日蓮宗 |
1〜3回 |
× |
曹洞宗 |
2回 |
1回目は押しいただき、2回目は押しいただかない |
真言宗 |
3回 |
○ |
故人の宗派が分からない場合は、自分の宗派に従っても問題ありません。
家族葬は故人と親しい人のみで執り行われるため参列者が限られています。家族葬に参列できなかった場合は、家族葬が終わった後に、弔問に訪れて焼香をあげるという選択肢があります。
弔問を希望する場合は事前に遺族に連絡し、許可を取っておきましょう。自宅に伺って弔問する場合は焼香ではなく、線香をあげることが一般的です。次項より弔問時のマナーを解説します。
弔問は礼装やスーツではなく平服(へいふく)で伺います。平服とはフォーマルの中でも自由度が比較的高い服装のことで、略喪服と呼ばれる場合もあります。平服といっても普段着やカジュアルなコーディネートではなく、落ち着いた清潔感のある服装を心掛けなければなりません。
また弔問の際は時計やアクセサリーなどの装飾品はできる限り外しておきましょう。供物や供花をお供えする際は、お返しが必要ない旨を伝えれば遺族の負担を軽減できます。
弔問で線香をあげる手順は以下のとおりです。
直接ライターやマッチから線香に火をつけるのはマナー違反とされています。そのため、まずはろうそくに火をつけ、そこから線香に火を移しましょう。ろうそくの火を息で吹き消してしまうのもマナー違反に当たるため、手であおいで消す必要があります。
立てる線香の本数や、線香を香炉に立てておくのか寝かすのかなど、線香のあげ方は宗派によって異なります。
次項で詳しく解説します。
故人の宗派を把握している場合は、弔問の際に以下の表を参考に線香をあげましょう。
【宗派による線香の本数・マナー】
宗派 |
焼香の本数 |
立てるか寝かせるか |
浄土宗 |
1本または2本 |
1本:立てる 2本:折って寝かせる |
浄土真宗(本願寺派) |
1本 |
2つに折って寝かせる |
浄土真宗(大谷派) |
||
浄土真宗(高田派) |
||
臨済宗 |
1本 |
立てる |
天台宗 |
3本 |
自分から見て逆三角形になるよう立てる |
真言宗 |
||
日蓮宗 |
1〜3本 |
1~2本:立てる 3本:自分から見て逆三角形になるよう立てる |
曹洞宗 |
1本 |
立てる |
故人の宗派が分からない場合は、自分の宗派に従っても問題ありません。
葬儀の場では焼香の作法やマナーを把握しておく必要があります。また、焼香の意味をきちんと知ることで、より心を込めて故人へ祈りを捧げられるでしょう。家族葬での焼香のマナーは一般的な葬儀とほとんど同じですが、お辞儀が不要であったりと異なる点もあります。家族葬に参列する際や、弔問に訪れる場合はあらかじめマナーを確認しておいてください。
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